私自身、毎日の開発や調査、資料作成でCodexClaude Codeを使うようになりました。最初は文章やコードを作ってもらう使い方が中心でしたが、今はファイルを確認し、アプリを操作し、結果を検証するところまでAIに任せられる場面が増えています。

これを実際の仕事で使っていると、中小企業のAI活用は「AIで何かすごい新事業を作る」ことから始めなくてもよいと感じます。

毎朝、同じサイトから数字を写している。毎週、Excelを開いて同じ集計をしている。届いた問い合わせを読み、担当者へ振り分けている。ファイル名を直し、決まったフォルダへ移している。

一つひとつは小さな仕事です。ただ、こうした作業は毎日積み重なります。人手が少ない会社ほど、その時間は重いです。

AIに会社を任せたいわけではありません。人がやらなくてもよい往復を、一つ減らしたいだけです。

今回の記事では、大がかりなシステムを入れる前に、毎日の手作業をAIで少しずつ自動化する考え方をまとめます。

DXは、大きなシステムの入れ替えだけではない

これまでDXというと、基幹システムを入れ替える、紙を全てデジタル化する、専門の部署を作る、といった大きな話になりがちでした。

もちろん、会社全体の仕組みを変えるなら必要なことです。ただ、地方の中小企業や数人の会社では、日々の仕事を回しながら大きな計画を進める余裕がありません。費用の問題もありますし、担当できる人がいないこともあります。

その結果、「うちにはまだ早い」と止まってしまう。

私は、ここがAIによって変わり始めたと思っています。

AIは、自然な言葉で指示を受け、文章、表、ファイル、Web画面など、今ある仕事の材料を扱えます。全てを専用システムへ作り替えなくても、既存の作業の途中へ入れるようになりました。

例えば、紙の受注書をいきなり全廃できなくても、読み取った内容を一覧へ整理するところから始められます。長年使っているExcelをすぐに捨てなくても、集計と報告文の下書きをAIに手伝わせることはできます。

これも立派なDXです。

社長が最初に決めるのは、「どのAIを買うか」ではなく、「どの手作業をやめたいか」です。

ただし、AIを入れるだけで、整理されていない仕事が自動的に整うわけではありません。「何を受け取り、何を作れば終わりか」を決める必要があります。ここは、今までの業務改善と同じです。

最初に探すのは、地味で繰り返しの多い仕事

最初の一件には、目立つ仕事より、地味で繰り返しの多い仕事が向いています。

私は、次の条件が多く当てはまる作業から探すのがよいと思っています。

  • 毎日、毎週、毎月のように繰り返している
  • 作業前の材料と、完成後の形が決まっている
  • 手順を担当者が言葉で説明できる
  • コピー、転記、検索、整形、照合に時間を使っている
  • 間違いが起きても、人が確認して元へ戻せる
  • 最初は個人情報や取引先の秘密を使わずに試せる

反対に、「長年の勘で決める」「例外が毎回違う」「一度実行したら戻せない」という仕事は、最初の自動化には向きません。

AIを導入しやすいかどうかは、仕事が高度か単純かだけでは決まりません。正解と終了条件を確認できるかが大切です。

どんな仕事から自動化できるのか

中小企業の現場で考えやすい例を挙げます。全てをAIだけで完結させるのではなく、下ごしらえはAI、最終確認は人という分け方です。

日々の仕事AIに任せやすい部分人が残す判断
問い合わせ対応内容の要約、分類、返信文の下書き事実確認、相手に合わせた判断、送信
定例報告CSVの整理、集計、前回との差の抽出、文章化数字の確認、理由の判断、提出
会議後の作業議事録の整理、担当と期限の抽出認識違いの修正、担当者との合意
資料作成公開情報の収集、構成案、表やグラフの下書き情報源の確認、会社としての結論
ファイル整理名前の統一、形式変換、フォルダ分け例外の確認、原本の管理
定型の画面操作決まったページの移動、入力、ダウンロード権限の承認、結果確認、確定操作

例えば、毎週月曜日に売上報告を作っている会社を考えてみます。

担当者は管理画面へ入り、CSVをダウンロードし、Excelへ貼り付け、商品別の合計を出す。前週との差を確認し、メール本文を書いて社長へ送る。手順が毎回ほぼ同じなら、その多くは自動化の候補になります。

AIに、ファイルの取得、表の更新、差分の抽出、報告文の下書きまで任せる。人は合計金額と大きな増減だけを確認し、最後に送信する。

ここで大切なのは、最初から送信まで全自動にしないことです。

まずは下書きで止め、何度か並行して動かします。間違いやすい箇所が分かってから、任せる範囲を広げます。

Codexで、画面操作も自動化の候補になった

少し前まで、業務自動化には専用の連携機能やRPAを作る必要がありました。連携先ごとに設定し、画面が変われば作り直す。小さな会社には、その準備自体が負担でした。

現在のChatGPTデスクトップアプリでは、CodexでComputer Useを有効にすると、許可したアプリの画面を見ながらクリック、入力、アプリ間の移動などを行えます。対応するOS、地域、会社側の設定、権限の範囲内であれば、コマンド操作がないアプリやWeb画面も作業対象にできます。詳しくはOpenAIのComputer Use公式資料にまとまっています。

さらに、Mac上で人が行った一連の操作を見せ、繰り返し使えるスキルの下書きを作るRecord & Replayもあります。昔ながらの録画マクロをそのまま再生するのではなく、入力、手順、確認方法を作業手順書にまとめるイメージです。毎週同じ管理画面を開き、データを取得して報告書を作るような、手順が安定した仕事と相性がよい機能です。

Scheduled tasksを使えば、決まった時間に繰り返す仕事を実行する構成も考えられます。ローカルのファイルを使う定期実行では、パソコンが起動し、デスクトップアプリと対象フォルダを利用できる状態にしておく必要があります。

つまり今は、「画面を人がクリックする仕事だから自動化できない」と、最初から諦めなくてよくなりました。

ただし、デスクトップ上の操作を何でも安全に自動化できる、という意味ではありません。画面の変更や突然の案内表示で手順が止まることもあります。安定したAPIや連携機能が用意されている仕事なら、画面操作より、そちらを使った方が再現しやすい場合もあります。

ログイン、外部への送信、データの削除、金銭に関わる確定操作では、人の承認を残すべきです。利用できる機能や対応環境も変わるため、導入時には最新の公式情報を確認する必要があります。

私は、「できること」と「任せてよいこと」を分けるのが重要だと思っています。

機密情報を扱わない仕事から始める

AIを仕事へ入れるとき、最初に便利さだけを追うのは危険です。何をAIへ渡してよいかを先に決めます。

最初は、公開情報、架空のサンプル、社内でも機密性の低い資料だけで試すのが分かりやすいです。顧客名を会社Aへ置き換える、実際の金額ではなくテスト用データを使う、といった方法もあります。

画面操作では、入力欄だけでなく、画面に見えている顧客名や金額、開いている別のウィンドウ、クリップボードの内容なども処理の対象になり得ます。実演や録画の前には関係のないアプリを閉じ、パスワードやAPIキーを指示やスキルへ書かないようにします。「自分のパソコン上で動くから、情報は外へ出ない」とは限りません。

一方、次のような仕事は、最初の一件から外した方が安心です。

  • 給与、口座、健康情報などの個人情報を扱う
  • 取引先との秘密や未公開の価格を含む
  • 振込、契約、発注、公開など、実行後に戻しにくい
  • 税務、法務、労務の最終判断を行う
  • 間違っても検知できる確認方法がない

将来も扱えないという意味ではありません。利用するサービスの契約、データの保持、社内ルール、アクセス権限を整えれば、対象にできる仕事は広がります。

ただ、最初から難しい場所へ入れる必要はありません。

AIに与える権限も、必要な範囲だけにします。最初は読み取りから始め、このフォルダ、このアプリ、このWebサイトという順で必要な範囲だけを許可する。閲覧だけでよいのに削除権限まで渡さない。下書きでよいのに自動送信させない。失敗したら止まり、人へ知らせる経路も用意する。

便利な道具ほど、境界線が必要です。

導入は、一つの仕事を五つの段階で進める

私なら、次の順番で進めます。

1. 一週間、繰り返している作業を書き出す

まずはAIの機能を探すのではなく、仕事を探します。

「何をしたか」「何分くらいかかったか」「週に何回あるか」「どこで待ったか」を簡単に記録します。社長だけで考えず、実際に作業している人へ聞くことが大切です。現場では、社長が知らない小さな転記や確認が積み重なっています。

2. 小さく、戻せる仕事を一つ選ぶ

候補の中から、非機密で、繰り返しが多く、結果を確認できる仕事を一つだけ選びます。

いきなり「経理を全部AI化する」では大きすぎます。「毎週届く請求一覧を、確認用の表へ整える」なら、入口が見えます。

3. 完成形と停止条件を決める

入力する資料、実行する手順、完成するファイル、人が見る場所を決めます。

同時に、「金額が空欄なら止める」「件数が前回と大きく違えば報告する」「外部への送信前に承認を求める」といった停止条件も決めます。

AIへの指示は長い呪文ではありません。目的、材料、守る条件、完成形をまとめた業務手順書です。具体的な書き方は、AIの「コンテキスト」を考えるでも説明しています。

4. 人の作業と並べて試す

最初の数回は、これまでの作業をすぐに捨てません。AIの結果と人の結果を比べ、どこで間違うかを確認します。

うまくいかなければ、AIそのものが悪いと決める前に、手順が曖昧ではなかったか、古い資料が混ざっていなかったか、完了条件を確認できたかを見直します。

5. 手順として残し、次の一件へ進む

安定したら、指示、使用する資料、確認方法、失敗時の戻し方を残します。必要に応じて、繰り返し使うスキルや定期実行へまとめます。

それから、隣の作業へ広げます。

AIを仕事として安定して動かすには、指示だけでなく、資料、道具、権限、検証方法までを整える必要があります。この考え方は、ハーネスエンジニアリングとは何か?でも整理しました。

小さな会社だから、小さく試せる

規模が小さいことは、AI活用では弱点だけではありません。

実際に作業する人と、結果を判断する人の距離が近い会社なら、「この作業を一週間だけ試そう」「合わなければ元へ戻そう」と決めやすい場合があります。会社全体の仕組みを変えず、一人の担当者、一つの作業、一つの確認用フォルダから始められます。

うまくいけば、同じ担当者が行う隣の仕事へ広げる。合わなければ止める。大きな投資の前に、実際の仕事で価値を確認できます。

チャットで一度うまくいったことと、毎週の業務として任せられることは別です。

だからこそ、試す範囲を小さくできる会社には、今のAIが合う場面があると思っています。

浮いた時間を、何へ戻すか

自動化の目的は、人を減らすことではなく、人の時間を戻すことです。

人を減らすことだけを目的にすると、現場は協力しにくくなります。会社にとっても、必ずしもそれが一番よい使い方ではありません。

小さな会社では、担当者が転記をしながら電話を受け、見積書を作り、後輩へ仕事を教えています。定型作業を減らせば、その人を顧客対応、提案、品質確認、教育、改善のような、人にしかできない仕事へ戻せます。

採用が難しい会社なら、今いる人数で仕事を回しやすくする意味もあります。急に受注が増えたときの余力にもなります。

そして社長自身が、夜に行っていた集計や資料作成を減らせれば、次の判断を考える時間ができます。

AIは、会社の価値を直接作らない作業を少しずつ減らし、人の時間を本来の仕事へ戻すための道具です。私は、そうやって固定的な作業を軽くしていくことが、より筋肉質な企業体質につながると思っています。

AIにも、運用と手入れは必要

もちろん、一度作ったら永遠に動くわけではありません。

Web画面の配置が変わる。帳票の列が増える。社内のルールが変わる。AIが想定外の解釈をする。こうしたことは起きます。

だから、止まったことが分かる記録、途中から人が引き継ぐ方法、元の手作業へ戻る手順を残します。定期的に、まだ正しい結果が出ているかも確認します。

自動化した仕事を誰も理解できない状態にするのは、別の属人化を作るだけです。

ここは正直、AIを使っても楽にはなりません。

ただ、対象を一つに絞り、確認方法まで作れば、改善はできます。最初から完璧な仕組みを目指すより、実際の失敗を見ながら直す方が現実的です。

まずは、明日も繰り返す仕事を探す

中小企業のAI活用は、全社的なAI戦略や、大きなシステムの購入から始めなくてもよいと思います。

毎日、何となく続けている転記。毎週、同じ形で作っている報告。毎月、担当者しか手順を知らない集計。まずは、その中から一つを選びます。

AIに任せるのは、全部でなくても構いません。

10工程のうち、調べる、並べる、下書きするという3工程だけでも、人が使う時間は変わります。

私自身も、開発、調査、資料作成の中で、こうした小さな改善を積み重ねてきました。実際に使っているからこそ、AIでできることだけでなく、権限や確認を残す大切さも含めて一緒に考えられます。

ROMIICKでは、今の業務を伺い、自動化しやすい一件を選ぶところから、試作、確認方法、日々の運用まで伴走します。「AIを入れたいが、何から手をつければよいか分からない」という段階でも大丈夫です。毎日または毎週、手で繰り返している作業を一つだけ教えてください。

AI活用について相談する

大きなDXの計画を作る前に、明日も繰り返す手作業を一つ自動化してみる。

私は、そこから一緒に始めるのがよいと思っています。